ほんとうの長文駄文。

27歳。エッセイを出すのが夢なので、その練習に。

真面目が祟った相席居酒屋の夜。

相席する居酒屋さんに行ってきた。
彼氏のいない大学時代の友人A子と、彼氏のいない私で。

18時ちょうどの少し早い時間。
諸手続きを済ませ、(アプリのダウンロードやらなんやら。「このアプリのアイコン、誰かに見られたらどうしよう。」そればっかり考えていた。)いざ相席のお相手を待つ。
先に相席が始まった隣を見ると女性陣は20代後半といったところ、お相手は結構な中年風のおじさん。おじ様、ではなく、おじさん。

「男性の方が来られまーす。」

ぎく。来る。私たちの席にも来る。
おじさんじゃありませんように、おじさんじゃありませんように、せめておじ様でありますように。
私たちは息を飲む‥というような間も無く2人組の男性登場。

こんにちは。

自己紹介もなくするりと会話が始まる。
お相手は29歳と25歳の会社の先輩後輩コンビ。
見た目も爽やかでほっと胸をなでおろす。

たまたまA子とお相手2人の仕事の業界が同じだということもあり、仕事の話が弾む。弾む。

あっという間に時間が経ち、2軒目へ行くことに。ダーツバーだという。

入ったら鏡張りで赤を基調とした店内、「ニューヨークみたいやね」と4年前に一度行っただけのニューヨークを今も我が故郷のように勘違いしている私は、A子の耳元で囁き無視された。

改めて乾杯して仕事の話。
あれ、これ職場の飲み会やっけってぐらい各々が仕事の話をする。25歳はテーブルの下で携帯をいじっている。おい、見えてるぞ。

その後ついに好きなタイプの話。
上戸彩が好きだという29歳と、ナチュラルボーン可愛い木村文乃が好きだという25歳。チーンって音がどっかで聞こえる。2人の要素が我々には微塵もない。わざとかな。牽制されているのかな。

そんな話をしてメインイベントのダーツ。
ちなみに私は今まで一度もダーツという遊びをしたことが無い。本当に本当に一度もない。
男女ペアの対抗戦。対抗戦の設定を作っておいて罰ゲームもご褒美も決まっていないのだから、私たちがいかに盛り上がっていないかが分かる。

男性陣がまずは投げる。上手いのか、そうで無いのかもわからない。
次に私の番。3投ともが、刺さらず床に落ちた。やばい。冷や汗がジメっと全身に広がる。1番場がしらける女だ。私は手取り足取り教えてもらい、キャッキャするような、か弱いタイプの女ではない。誰も私にそんな役割を期待していない。絶対に次は的に刺さなくてはいけない。この決意を心に誓う。

すると隣のレーンで黙々と1人で投げ続けている男性が目に留まった。彼のダーツは早いスピードで、ズンっという大きな音を立て的に刺さっている。

彼だ。彼しかいない。救世主よ。
私は自分が投げる番以外はとにかく彼を観察。観察に次ぐ観察。彼の体勢を真似し、彼のダーツの持ち方を真似し、彼に合わせてダーツを放つ振りをする。素振りだ。中学時代の剣道部のスピリットが目をさます。メンッメンッ。
自分の番になれば素振りの感覚のまま、位置につき投げる。刺さる。嬉しい。この感覚、次の番まで忘れないようにしなくちゃ。また3人が投げている間、隣の彼に合わせて素振りを繰り返す。私の番。刺さる。安定して良い位置に刺さるようになってきた。「いいねぇ」。29歳の声。褒められた。もっと上手くなりたい。さぁ、素振りだ素振りだ。
私の番。投げる。とても真ん中に近い場所に刺さる。「ブルや!」ブル?よく分からないがまぁ、良いことなのだろう。やった。嬉しい。
私はその後も素振りの度にフォームを改善、高速のPDCAを回してどんどん真ん中に近い場所に矢を刺した。「いいねぇ」。29歳の声が心なしか乾いている。

8回順番を回し、試合が終わる。
なんと私は、4人の中で1番だった。

「すごいねぇ」。ついには目も笑っていない男性陣。
その時に気づいた。やってしまったのだと。最近は仕事も上手くいかなくてすっかり忘れていたけれど、そういえば私は真面目な性格だった。出来ないことを工夫して改善を続け出来るようにしていく、真面目な性格をしていた。それが私の長所だった。
でも今は違った。真面目が祟った。
そんなに高みを目指すシーンではなかったのだ。

その後なんとなく話す事も尽きてきて、ほどなくして解散した。2軒目もご馳走になったけど、連絡先も交換しなかった。

後に繋がる恋愛のタネみたいなのは手に入らなかった。
でも構わない。私は違うものを見つけた。

あぁ、早くまたダーツへ行きたい。
この感覚を忘れる前に。